東京地方裁判所 昭和46年(借チ)3号 決定
〔主文〕1 申立人、相手方間の別紙目録記載の土地賃貸借契約の目的を堅固建物の所有に変更する。
2 右土地賃貸借契約の借地期間を本裁判確定の月の翌月から三〇年に、賃料を右同月から一ケ月金二八、〇四八円にそれぞれ変更する。
3 申立人は相手方に対し金五〇〇万円を支払え。
〔理由〕一 本件申立の要旨
1 申立人は相手方から別紙目録記載の土地(以下本件土地という)を同目録記載の約定で賃借している。
2 申立人は本件土地およびこれに隣接する申立人所有土地二六坪四合(八七、二八平方メートル)とをあわせて同所でガソリンスタンド(給油取扱所)を経営し、本件土地上に木造セメント瓦葺平家建事務所一棟建坪約一〇坪(三三、〇五平方メートル)を所有しているほか給油取扱所経営に必要な石油タンク、洗車場等を設備している。
3 ところが、給油取扱所に設置する建造物については政令により壁、柱、床、はりおよび屋根を耐火構造とし、または不燃材料を用いて造るべきことを義務づけられているところ、前記既存建物は右の規定に違反しているため消防署からも再三耐火または不燃材料による建物に改築するように勧告されている。そこで、申立人は右建物を取毀し、鉄筋コンクリート造の二階建の建物(事務所、休憩所、工具機械置場等に使用)の建築を計画し、そのために本件契約の目的を堅固建物所有に変更したいが相手方との協議が整わないので、借地条件変更の裁判を求める。
二 当裁判所の判断
1 本件で取調べた資料によれば、前記一の12の事実を認めることができる。もつとも、申立人は本件借地の範囲について本件二筆の土地のうち相手方が使用している東南角部分一八坪を除く六三、四八坪と主張するところ、申立人が主張する右二筆の土地の実測面積八〇、三三坪から一八坪を差引くと計算上六二、三三坪となる。右資料によると、申立人の借地面積についての主張は単なる計算違いではなく、従前から相手方の要求により借地面積は六三、四八坪あるものとしてそれに応じた賃料が支払われていたため右のような主張になつたものと認められるが、相手方も当庁昭和四二年(ワ)第三二九八号事件で本件二筆の土地の実測面積について右申立人主張と同様の主張をしていることに鑑み、当裁判所は計算上求められる六二、三三坪をもつて本件借地面積と認定する。なお相手方は本件借地の一部の返還を受けた旨主張するが、右事実を認めるに足る資料はない。
2 ところで、前記資料によると本件土地付近は商業地域、準防火地域、六種容積地区に指定され、近時次第に高層ビル街になる傾向にあり、高層建築用地として収益性の高い地域であることが認められ、本件土地は、現に借地権を設定する場合には堅固な建物所有を目的とするのが相当であると認められるので、本件申立はこれを認容すべきである。
3 附随処分
借地条件変更の裁判により、賃貸人は借地期間の延長、建物の耐用年数の延長による朽廃時期の延期、明渡時の建物買収価格の増加等の不利益を受ける反面、賃借人はこれに応じた利益を得るものであるから、右利害を調整するため申立人に財産上の給付を命ずべきである。鑑定委員会の意見によれば、本件土地の更地価格は三、三平方メートル当り一〇〇万円と評価するのが相当であると認められ、給付額は、右更地価格を基礎とし、前記資料により認められる、申立人が本件契約締結の頃権利金として合計一七八万円を相手方に支払つていること、本件契約の残存期間が一〇年余あること、本件借地の利用方法は条件変更後もかわらないこと等諸般の事情および従前の裁判例を考慮し、鑑定委員会の意見を参考として更地価格の約八パーセントに当る五〇〇万円を相当とする。また借地条件の変更にともない、借地期間を本裁判鑑定の月の翌月から三〇年と変更する。
賃料は、土地利用効率の増大にともない増額するのを相当とし、従前の賃貸借の経緯特に現行地代が昭和三九年七月から改訂されたものでその後固定資産税等公課の増徴、地価の上昇等が著しいこと等を考慮し、鑑定委員会の意見のとおり一ケ月三、三平方メートル当り四五〇円合計二八、〇四八円と定める。
なお、申立人は財産上の給付額を定めるに当り、申立人が本件土地上に建築を計画している建物の敷地面積を考慮すべき旨主張するが、借地条件の変更は借地上の具体的建物の存否、大小とは直接には関係なくなされるものであるのみならず、本件において申立人は借地の一部に鉄筋の建物を建築することにより本件土地全体を給油取扱所として有効に使用することができるのであつて、右主張事実は本件附随処分決定の一事情として考慮するとしても申立人が主張するほど重視することはできない。 (河村直樹)
目録
(土地賃貸借契約)
1 当事者
賃貸人 相手方
賃借人 申立人
2 目的土地
(1) 東京都台東区浅草橋五丁目一一番八
宅地 三九、二八坪(実測四一、五坪)
(2) 同所同番三〇
宅地 四〇、七七坪(実測三八、八三坪)
のうち、六二、三三坪
3 目的
木造その他の非堅固建物所有
4 期間
昭和五七年一二月二九日まで
5 現在の賃料
一ヶ月一一、三六七円
(三、三平方メートル当り一九〇円)